物理的に働きかけ健康をつくる
昔から「湯治」の名にある通り、民間療法の代表的なものとされてきた温泉ですが、その効果は大別すると三つあげられます。
まず第一にあげられるのが、温熱、水圧、水の浮力・粘性抵抗など、私たちのからだに物理的に作用し健康をつくる効果。
例えばからだが温められると新陳代謝が活発になり、皮膚の血行がよくなり、汗が出てきます。
その結果、毛穴につまった汚れが取り除かれ、肌も美しくスベスベしてきます。
汗を出すということはからだの体温調節機能を働かせることにもなり、温度変化に鈍くなった私たちのからだを健康へと仕向けてくれるのです。
また入浴すると、水圧によってウエストが3~6㎝、胸囲が1~3㎝も縮少します。
このカがなかなかバカにできません。温泉に胸を1㎝沈めるごとに、胸の内部には0.5㎏の圧力が加わり、自然に呼吸筋を鍛えてくれます。
含有成分が作用し健康をつくる
美人の湯、神経痛の湯、心臓の湯、貧血の湯…。
温泉はその効能、効果により古くから様々な通り名がつけられてきました。
これはとりもなおさず、「各温泉にはその成分による独持な化学作用があり、その化学作用によって、どんな症状に効果があるか決まってくる」ことを言いあらわしています。
科学の発達していなかった昔から、古人は体験の積み重ねとロコミにより、温泉の化学成分が私たちのからだにはたす役割を知っていたのです。
この温泉成分は皮膚を通して体内に吸収され、からだの機能が健康に働くよう作用します。
皮膚からの吸収は、温泉から出た後も、その成分が皮膚に付いている間は続いています。
浴後、水や普通のお湯でからだを洗い流さない方がいいというのはこのためなのです。
からだの働きを変えて健康をつくる
難しい言葉でいうと温泉の変調効果(総合的生体調整作用)ということです。
私たちが温泉に入ると、からだは温度や水圧、それに化学成分などにより刺激をうけます。
すると、人間の健康と病気の殆どすべてに関連をもっている交感神経が働きだし、一時的にこの刺激からからだを守ろうとします。
体温上昇、血圧上昇、疲労、筋肉の痛みなどが起こるのです。
しかし一定時期が過ぎるとそれらは回復し、胃や心臓などの諸機能の働きをつかさどる自律神経が再調整され、有益なホルモンの分泌も増加します。
人間のからだの働きを温泉の刺激により一度変え、自然治癒力を増幅し、自己回復力を発揮させる。
温泉のもつ大きな力です。
【温泉医学のこぼれ話】
○温泉の三要素
(1)泉温 (2)溶解成分(泉質) (3)湧出量
○温泉の成立要件
(1)水源の存在 (2)熱源の存在 (3)水(流体)の通路の存在
○水分子H2Oを構成する水素と酸素の安定同位体組成の研究から、温泉の70%は天水(降水)と判断される。
○熱源によって「火山性温泉」「非火山性温泉」の二種に大別される。
火山性温泉 | 非火山性温泉 |
火山ガス加熱型=酸性泉(塩酸・硫酸) 熱水(希釈)型または熱水性温泉=塩化物泉 蒸気加熱型=硫酸塩泉、炭酸水素塩泉 |
深層地下水型 化石海水型 割れ目系循環 |
○温泉の三養
温泉の医治的効果=総合作用=休養+保養+療養=温泉療養
・休養:安静により疲労、その他健康を損ねた状態よりの回復
・保養:健康を保つ意味。疾病予防からさらに積極的な健康増進を図ること
・療養:疾病を治療する。近年は損なわれた機能回復によるリハビリも含む
○健康づくりの「三浴」
1.「水浴」一般家庭の入浴・海水浴・温泉浴など
2.「日光浴」その名のとおり
3.「大気浴」海や森のなかの空気浴、森林浴
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