正しい温泉湯治の仕方

正しい湯治の作法

温泉は、ただ入ればよい、というものではなく、近代医学に裏付けられたルールがちゃんとあります。
そのルールを知らないとかえって症状を重くしたり、思わぬハプニングにも出会いかねません。
そこで、ちょっと一言……
 

湯治にふさわしい季節

 
湯治は日本では豪雪地帯や人里離れたところを除いては昔から四季の別なく一年中行われており、特にいつがいいということもありませんが、混むのは農閑期。
夏は暑くて体の新陳代謝機能が低下し、食欲も減退し、いささか疲労こんぱい気味なので、夏湯治はおおいに意味があります。
 

理想的な滞在期間

 
一般的には一回り3~4週間といわれ、本当に効き目を発揮するには最低2週間は必要でしょう。
温泉は注射や西洋新薬と違って、入浴したからといって2、3日で効き目を表すものではありません。
漢方と同じで、病人の体に働きかけて、病気と闘う力を強めて治そうというものですから、どうしても3~4週間はかかるのです。
その間に縮んだ筋をゆるめ、血管の反応を治し、解毒をはかり、神経緊張を調整し、ホルモン分泌のバランスをとったりするのです。

だからといって何ヶ月も滞在しても無駄ですから気をつけてください。
温泉効果には“慣れの現象”があって、長期滞在すると体が反応を示さなくなります。
露天風呂で裸の付き合い
 

温泉の上手な入り方

 
温泉に来た嬉しさのあまり、よくドボンとすぐ入る方がいますが、これはいただけません。
まずは桶で湯を体に何杯もかけて毛細血管を徐々に広げてください。
それをせずに急に熱い湯に入ると、皮膚の血管がパッと広がって血圧が下がり、時には脳溢血や心臓発作を起すこともあります。
特にお年寄りは血管が弱っているので要注意です。
 

入浴の時間と回数

 
入浴時間は泉質や泉温、体質、病気の程度などによってまちまちですが、普通は一回がせいぜい10分、高温だったら5~6分、微温浴だったら30分くらいが適当です。
原則的にはあまり熱くない湯にゆっくり入ることで、その間に温泉に含まれ天然ミネラルが体内に吸収され、鎮静作用も加わります。
回数は初めは少なく、一日一回で充分。
たくさん入れば一層よく効くというものでもなく、その後は一日二回に増やし、あとはせいぜい三回くらいです。
あるスポーツ学者によると、温泉に30分入ると1000メートルの距離をマラソンしたと同じエネルギーを消耗するといわれています。
疲れすぎてしまっては何にもなりません。
 

湯あたりは快方の前兆

 
湯治が長びくと、ときには食欲が減退したり、めまいがしたり、全身がだるくなったり、湯かぶれをおこすことがあります。
関節の病気の場合は疼痛が生じたり、ますます歩行困難になったりします。
つまり俗にいう“湯あたり”で、これは病気の悪化ではなく、むしろ快方に向かう前兆です。
その時は入浴の回数を減らし、もっぱら休養をはかってこの苦しさを乗り越えてください。
あまりにひどい時は何かほかに原因が考えられますので、お医者さまの診断をあおぐようにしてください。
 

【湯治こぼれ話】

禁忌症について
禁忌症は、1回の温泉入浴又は飲用でも有害事象を生ずる危険性がある病気・病態である。なお、禁忌症にあたる場合でも、専門的知識を有する医師の指導のもとに温泉療養を行うことは妨げない。

(1)温泉の一般的禁忌症(浴用)
病気の活動期(特に熱のあるとき)、
活動性の結核、進行した悪性腫瘍又は高度の貧血など身体衰弱の著しい場合、
少し動くと息苦しくなるような重い心臓又は肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気、
消化管出血、目に見える出血があるとき、
慢性の病気の急性増悪期

(2)温泉の一般的禁忌症(浴用)
掲示用泉質浴用飲用
酸性泉皮膚又は粘膜の過敏な人、高齢者の皮膚乾燥症
硫黄泉酸性泉に同じ

(3)含有成分別禁忌症
成分浴用飲用
ナトリウムイオンを含む温泉を1日( 1,200/A)×1,000mLを
超えて飲用する場合
塩分制限の必要な病態(腎不全、心不全、肝硬変、虚血性心疾患、高血圧など)
カリウムイオンを含む温泉を1日( 900/A)×1,000mLを
超えて飲用する場合
カリウム制限の必要な病態(腎不全、副腎皮質機能低下症)
マグネシウムイオンを含む温泉を1日(300/A)×1,000mLを
超えて飲用する場合
下痢、腎不全
よう化物イオンを含む温泉を1日(0.1/A)×1,000mLを
超えて飲用する場合
甲状腺機能亢進症
上記のうち、二つ以上に該当する場合該当するすべての禁忌症

 

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